こういった悩みにお答えします。
✔本記事の内容
- 水中毒とは
- 水中毒の原因
- 水中毒の看護
- 飲水チェックや体重測定の実際の看護
この記事を書いている私も現役精神科看護師でたびたび水中毒の患者さんのケアや看護展開をしています。
この記事を読めば、水中毒の患者や多飲水のある患者の症状、原因、看護がざっくりと理解できて明日からの看護に活かせるはずです。
ちなみに精神科看護に興味のある看護師さんは下の記事が参考になりますよ。
参考【2021年最新】精神科看護師転職マニュアル【仕事内容・役割・やりがい徹底解説】
参考【保存版】精神科看護師歴5年が教える精神看護の勉強法とおすすめ本を徹底解説
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多飲症や水中毒とは
水中毒とは、多飲症によって体内に大量の水分が貯留した結果、様々な臨床症状が出現する状態です。
※多飲症とは、健常者と比較してい大量の水分を摂取する状態のことを言います。1日3L以上水分を摂取する患者は多飲症といえます。
水中毒は、精神障害との関連が明らかとなっています。
重症多飲症患者の約8割は統合失調症
残りの2割
- 気分障害
- 器質性精神障害
- 精神遅滞
- 神経症
- 摂食障害
飲水管理をしつつ、統合失調症の患者さんへの看護への理解も必要になります。下の記事が参考になります。
多飲症でどのような弊害が起きるか
多飲症により、身体の中ではどのような弊害が起こるでしょうか?
健常者と比較して、多飲症の患者は大量の水分を摂取しているため、血液中にも水分が多く入っている状態になっています。
人間の体重に占める水分の割合は、子どもから成人、高齢者にかけて50~70%ほどです。
しかし、多飲症の患者はこの割合が健常者に比較すると、多くなります。
結果として、血中の水分の量が多くなり、その分血液中の成分の濃度も薄まります。
つまり、水中毒や多飲症によって、血液の成分が薄まり下のような弊害が起こります。
- 低Na血症
- 薬剤の血中濃度が相対的に下がる
- 結果的に精神症状の悪化が起こる
特に、水中毒や多飲症で要注意してチェックしている血液成分は、電解質と呼ばれる血液成分。
電解質とは、Na(ナトリウム)、Cl(クロール)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)です。これらの値は以下の基準値で血中濃度の均衡が保たれています。
- Na(ナトリウム):135~145mEq/l
- Cl(クロール):98~108mEq/l
- K(カリウム):3.5~5.0mEq/l
- Ca(カルシウム)8.6~10.2mEq/l
多飲症や水中毒の患者は、電解質の値が基準値より低くなることが多いです。
また、多飲症や水中毒の患者は、電解質の値が低いことになれているため、電解質の値が基準よりも低くても臨床症状に乏しい場合もあるため、目に見えている症状だけでなく、これらの血液データは注意深く観察することが大切です。
低ナトリウム血症とは
低ナトリウム血症とは、Na(ナトリウム)の基準値135mEq/l以下の場合を指していいます。
血中のNaの値が低くなることで、
- 頭痛
- 嘔吐
- 倦怠感
- 疲労感
など症状が現れ、重症になると性格変化や痙攣、最悪の場合には死亡することもあります。
症状のナトリウム値に依存しています。症状の目安としては、以下のナトリウム値の変化による症状を参考にしてください。
135mEq/l以下:低Na(ナトリウム)血症
- 135mEq/l:軽度の疲労感、倦怠感
- 120mEq/l:頭痛、嘔吐、精神症状(イライラ感、焦燥感など)
- 110mEq/l:性格変化、痙攣、意識障害、昏睡
- 100mEq/l 呼吸困難、死亡
多飲水により薬剤の効果が減少する
多くの薬剤は尿中から排出されます。
多飲症の患者は、水の影響で、血液成分の濃度が薄まるというはなしは先ほどもしました。
つまり、血液成分中に溶け出す薬物も同じく血中での濃度が薄まります。
薬物には患者各々で適切な薬物量を調整して内服してもらっています。量を調整しているのは、患者それぞれで適正な血中濃度があるからです。
多飲症の患者は、多飲水のために薬物血中濃度も薄くなります。また、水分を多く取っている影響で、多尿となります。尿から薬物が排出されるため、薬物が脳に到達する前に排出されるため、薬物の効果も薄まります。
多飲水により、薬物血中濃度が薄まること、尿へと薬物が排出されるため、薬物の効果が減少します。
統合失調症の死亡事故の20%は水中毒
統合失調症の死亡事故の約20%は、多飲水、水中毒によるものが占めています。
多飲を示す患者の死亡年齢も多飲がない患者に比べると10年も早く死亡しているという研究もあり、多飲水・水中毒は確実に寿命が縮まるといっても過言ではありません。
宮崎県宮崎市で当時36歳の女性が病棟にて水中毒で亡くなっています。この件について娘の父親が病院へ損害賠償を求めて訴訟を起こしています。第一審の結果3500万円の支払いが命じられて第二審では2600万円に減額されたものの、病院側の過失が認定されています。
このように死に至るリスクもあり危険な病気、症状です。
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多飲症や水中毒の原因
多飲症や水中毒の原因は、いまだに不確定とされています。
原因として挙げられるのは、心因できなもの、精神症状によるもの、薬物による副作用などです。
- ストレスなどの心因性によるもの
- 精神症状、異常行動によるもの
- 抗精神病薬による副作用や関連
- 抗利尿ホルモンの分泌や作用異常
- 脳における口渇中枢や浸透圧コントロール異常
- 遺伝子多型性との関連
- その他(飲酒や喫煙など)
患者はどうして水を飲むのか?【水中毒や多飲水の理由は?】
多飲症や水中毒の原因は明らかにはなっていませんが、患者への聞き取り調査で以下のようなデータがあります。
患者のほとんどは、爽快感や気分転換に水を飲んでいることがわかります。
多飲症や水中毒への看護【飲水自体を少なくすることをイメージしつつ看護計画を】
多飲症や水中毒の看護は、まず本人に多飲による危険性を説明し飲水制限を行うことからはじめ、また多飲に対する自覚を持ってもらうため認知行動療法も取り入れながら関わります。
また、飲水料を意識できるように飲水チェックや体重測定もすることが多いですね。
実際の看護は下のとおり。
- 飲水制限
- 体重測定
- 認知行動療法
順番に解説します。
水中毒への看護①飲水制限【2L上限とすることが多い】
飲水制限は、主治医と相談しながらですが、上限を2Lとしこまめに体重測定を行いながら関わります。
飲水量をチェックする表などを作り、患者本人や看護師サイドで飲水量をモニタリングすることも大切です。
体重測定は、自ら行い報告していただくことが理想的です。本人に体重測定を介して、多飲となっていることを自覚してもらう狙いがあります。
しかし、臨床の現場では患者が自主的に体重測定をすることが困難な状況もあります。
起床時、就寝前など1日数回測定時間を決めて体重測定を実施しましょう。
水中毒への看護②ベース体重測定(ドライウエイト)
飲水していない状況で体重測定をして、ベース体重を決めることが重要です。
ベース体重を基準に
- どのくらい飲んだのか
- 何Kg体重が増えると身体に症状が出るのか
- イライラや焦燥感などの精神症状が出るのか
を患者本人に理解してもらいます。
理想を言えば、水中毒の症状を呈してから数日は、行動制限により水を自由に飲めない状況を作り、その状況かでベース体重をはかることが望ましいです。このあたりは医師と相談しつつ検討を行いましょう。
ケースバイケースなので、柔軟に対応しましょう。
水中毒への看護③認知行動療法
水中毒の患者さんの中には、強迫的に水を飲む患者さんもいれば、爽快感を求めて飲水する患者もいます。
認知行動療法を導入することで、自己の飲水という行動を見つめる機会を作ってもらい、結果的に飲水量を下げていくことが目的になります。
多飲症や水中毒患者への看護ケア
多飲症や水中毒の患者への看護ケアは、観察ポイント、関わりのポイントの2つに分けれます。以下の関わりを通して、患者本人の考え方を変えていくこと、振り返りを行うことが重要となります。
- 身体症状、精神症状の観察
- 定期的な血液検査にてモニタリング
- 食事、水分の摂取状況、排尿・排泄状況の観察
- 1日数回の体重測定(起床時、就寝時の2回が多い)
- 患者の訴えをよく聞き、共感的に接する。
- 患者の多飲水の原因や飲水時の振り返りを行う。
- 水分制限の必要性、水中毒の危険性を説明し、問題を共有する
- 余暇活動(オセロ、トランプ)などを行い、コーピング方法を検討する。
いずれも水中毒だからというよりは基本的な看護になります。
むしろ、統合失調症への看護の方が参考になります。
【まとめ】水中毒と統合失調症を同時に理解して退院後も意識。
多飲症や水中毒の症状、原因、看護について解説してきました。
実際の現実は、上記の方法でもなかなか症状が改善できないというのが本当のところです。飲水量、体重測定などが逆に患者のストレスになるという考え方も出てきており、行動制限を行わない治療方法も最近では新しい治療方法として出てきています。
上記の方法がすべて正しい方法ではない可能性も否定できません。実際に患者と関わる際には、主治医やチームでよく相談のうえで看護を行いましょう。
基本的には、
- 体重測定:起床時+就寝時
- 飲水量チェック:表を作成し水分量を細かくチェックしてもらう
- 血液検査にて電解質や薬剤の血中濃度のモニタリング
などなどを行いつつ、飲水量を減らしていきましょう。
退院後も継続できるように患者に合わせて飲水チェック表を作ること、認知行動療法にて飲水行動自体を減らすことが大切です。
一般病棟にいる看護師さん、あなたは危険かも。
- 残業が当たり前。
- 仕事が物理的に終わらない
- 夜が眠れない、仕事が嫌すぎる
実は精神科なら残業がほとんどなく、人間関係もよく、コミュニケーションを中心とした看護を展開しやすいですよ。
もし、精神科に少しでも興味があるなら下の記事が参考になります。
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